| 「高倉別は馬にまたがり急ぎ館に立帰り、 |
| 『秋月姫神に申し上げます。当山の寄せ手はウラル彦、ウラル姫の魔軍ならむと思ひきや、撞(つき)の御柱大神(みはしらおほかみ)の珍(うづ)の御子(みこ)なる五柱(いつはしら)の一神(いちにん)、天津彦根神(あまつひこねのかみ)、鋼鉄(まがね)の鉾(ほこ)を打ちふるひ竹藪に火を放ち、うろたへ騒いで逃げまはる島人を一人々々引捕(ひきとら)へ、見るも悲惨なその振舞、建物を破壊し生物(いきもの)を屠戮(とりく)し、乱暴狼藉いたらざるなく、群がる数万の軍勢に対し、味方はわづかに老若男女を合して四十余人、人さかんなれば天に勝つとやら、もうかうなる上は是非におよばず、いさぎよく自刃(じじん)をとげ、名もなき敵のやつ輩(ばら)に殺されむは末代の恥、吾より冥途の魁(さきがけ)つかまつらむ』 |
| と早くも両肌をぬぎ、短刀を脇腹に突き立てむとする一刹那、竜山別は宙を飛むでこの場にあらはれ来り、高倉別が短刀をやにはに引たくり声をはげまして、 |
| 『ヤア高倉別殿、貴下はたふとき神につかふる神司(かむづかさ)、この場におよんで神より受けし貴重なる生命をみづから捨てむとしたまふは何事ぞ。今のいままで全心全力をつくし、力およばずして後に運命を天にまかさむのみ。これ人を教ふる吾々の採るべき道にあらざるか。しばらく思ひとどまりたまへ。善悪邪正を鏡にかけしごとく明知したまふ誠の神は、いかで吾らを捨てたまはむや。自殺は罪悪中の罪悪なり。貴下はなにゆゑにかかる危急の場合にのぞみて神に祈願せざるや』 |
| 高倉別『アヽ貴下は竜山別殿、にはかの敵の襲来に心もくらみ一身の処置にまよひ、神をわすれ道を忘れたるこそ吾が不覚、恥づかしさのかぎりなれ。しからば仰(おほ)せのごとく、これより高楼(たかどの)に登り、天地の神に祈願をこらさむ』 |
| といういうとして高楼目がけて登り行く。」 |
『霊界物語』第12巻・第26章「秋月皎々」